絵物語

2009年7月12日 (日)

月闇夜

72_2みんなを照らしてあげたかったのです。
独りを知ってしまったうさぎさんは、
たとえそれが無謀で傲慢な行為だったとしても、
明るい道筋になってあげたかったのです。

本当のことを知っている唯一の猫は、
毎晩毎晩、夜を引き止めています。
闇があの子を覆ってしまわぬように。
寂しがり屋さんの心が、
また不必要に濡れてしまわぬように。
それがあの子への恩返しになると信じて。

「あの子の嫌いな夜は、あたしも嫌い」

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2008年8月23日 (土)

同窓会

72今日は昔の仲間があつまった。
ひさしぶりの同窓会。
わいわい、がやがや、楽しいひととき。
気心の知れた旧友たち。

だけども、大事な約束が。
「ほんとのことはしゃべるの無しね」

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2008年4月23日 (水)

哀しみの連鎖

72_3   スルスルスルッっと今日も猫娘は梯子の上へ。
それはそれは見事な身のこなしです。
曲芸師としてはまだ経験が浅い彼女でしたが、
あっという間に文字どおり
誰よりもてっぺんに昇りつめていったのです。
梯子のてっぺんから
蚤のように見える観客を見下ろしながら
彼女はひとり思いました。
「あたしってこんなにちっぽけなんだよネ。
・・・何だかつまらないワ」
そうして若者は闇に消え曲芸師のバトンは
次の誰かに渡されてゆくのです。
赤と黒の連鎖はいつまで続いていくのでしょうか。

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マスカレード

72_2 一見普通に見える玉乗りの娘でしたが、彼女は病に侵されていました。
人知れず毎晩悪夢にうなされていたのです。
そう、彼女は心の病にかかっていたのです。
それを知られたらサーカスに居ることが出来なくなると思った娘は
必死に病気を隠しながら芸を続けていたのです。
でもとうとう我慢の限界がやってきてしまいました。
彼女は舞台の上でわけのわからないことを大声で叫んでしまったのです。
ふりかかる容赦のない冷たい視線に耐え切れなくなった彼女。。
目覚めたのはサーカス団の医務室のベッドの上でした。
いつの間にか気絶してしまっていたようです。
彼女の心は絶望と病気への憎しみでいっぱいでした。
「なんで私だけなんで私だけなんで私だけ!
苦しいの苦しいの苦しいの苦しいの!!みんなみんな病気になってしまえばいいのよっ!!!」
それは舞台で叫んでいたことと一字一句違わない彼女の心の叫びでした。
サーカス団が人気のあった時代、心の病がまだ理解されてなかった時代。
今では・・・今も??????

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もげる、はがれる

72 「困ったもんだよ、まったくサ」
愚痴を呟きながら、ガービィは一生懸命ゴミ拾いの毎日です。
あまりに素晴らしい玉乗り芸に拍手をしすぎて、
はずれてしまった仕立て屋の腕。
開園時間に間に合うように、急いで走ってもげた灯台守の脚。
ピエロの芸にひさしぶりに笑った、不幸な少女の濡れた唇。
いろんなものたちをガービィは、愛用のハサミで掃除してゆきます。
ん、今度はなんだろう・・・・
ガービィは今までみたことのないゴミを見つけました。それは、小さくて四角い箱。
おそるおそる中を見てみると、入っていたのは真っ白な液体でした。冷やかしにゴミ拾いを観ていた会計士のグリネルは長いくちばしをひくひくと動かしながら、興味深げに観ています。と、ガービィが液体に触れた途端、彼のもう一つの姿が・・・・。
「あんた、その顔はなんぞな。どっちが本当の姿なんぞい?」
びっくりしたグリネルは思わず叫びました。
「どっちも本当の僕なのサ、そういうものじゃないかい?そんなに気にするものでもないサ」
涼しげな顔でゴミ拾いを続けるガービィを観ながら、グリネルは思いました。とすると、わしにもきっともう一つ・・いや二つ・・・

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2008年4月20日 (日)

命の水

72_2 それは一瞬の出来事でした。
空中ブランコの練習中だったあの娘は瞬きをする間もなく、
きりんさんが何匹肩車しても届かない高さから転落したのです。
即死でした。あの日から3年、お酒を手放せなくなったお母さん。
みんなが心配しました。アルコールはお母さんの身体を心を容赦なく蝕んでいきました。
もうダメかもしれないな・・・と誰もが思いはじめたある日、
お母さんはほろ酔いの中、夢をみました。
夢の中でピンクの象が踊りながら言いました。
「 ☆○△×☆☆!!!」
そして決心しました、もうお酒はやめようと。
畑を耕すピンクの象はこうして産まれたのです。
そのお父さんが、幻覚か、妄想なのかはわかりません。
でもこの鮮やかな象さんは、愛娘を亡くしたお母さんにとって、
かけがえのない存在になったのです。

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本当の翼

72   鳥って羽があって飛べるからいいな・・・ん、いやいや
  世の中には飛べない鳥だっているんだよ。
  ロープを渡るあの娘がそうだよ。

  全く飛べないあたしだけど、上手にロープを渡れるんだよ。
  だから飛べ無くったって平気。
  みんなと違っていても平気。
  苦手なことや出来ないことがあっても平気。
  だってあたしはあたしだもん。
  こんなに華麗にロープを渡ることの出来る鳥は
  あたしの他にはいなくってよ。
  あたしは飛べない鳥。
  あたしはあたしが大好きなの。

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2008年4月 9日 (水)

笑顔の秘密

72_5   うさぎさんは時々考えます。
  サーカスってなんなんだろうって。
  うさぎさんは時々考えます。
  仲間ってなんなんだろうって。
  うさぎさんは時々考えます。
  自分ってなんなんだろうって。
  うさぎさんは時々考えます。
  生きるってなんなんだろうって。
  そしてうさぎさんは時々さびしくなるのです。
  さびしすぎると死んでしまううさぎさん。
  悲しいことにならないように、今日もナイショで愛でます。
  そしてちょっとだけ笑顔を取り戻すのです。

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蝶々婦人

72_4 一生に一度だけどこにもない時間にいけるとすれば、
 あなたは何をして過ごしますか?
 蝶々婦人は今年もサーカスにやってきました。
 祭りの喧騒が去り行くとき、婦人もまた同時に去り行くのです。
 存在する時間へと戻りゆくのです。
 自分と向き合うために。

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言葉のない言葉

72_3 このサーカス団には郵便ポストがあって、
それは時々きまぐれに森の中や道端にひょっこりあらわれます。
ある日、一風変わった手紙がサーカス団に届きました。
赤茶けた封筒に入れられた深緑の便箋には、
不思議なことに何も書かれていなかったのです。
それはしばらくの団員の間で話題の中心でした。
「あぶりだしだろうか」「書き忘れじゃよ」「無言の応援と思うわ」
様々な憶測が飛び交います。
でもサーカス団のみんなはわかっているのです。
この手紙をポストに入れたとき、
送り主の心の中にはサーカスのみんなが居た。
文字や言葉はなかったけれど、そのことだけで充分だったのです。
もしも運良くポストに出会えたならば、
あなたもお気に入りの団員宛に手紙を送ってみてはどうでしょう?
ファンレターや感想文、もしあなたに不満があるのなら、注文をつけてもいいのです。サーカスをみてくれるみんなの想いがたくさん詰まった手紙、それを団長や団員たちは楽しみに待っているのです。

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2008年3月28日 (金)

ダイエット

Daietto72 甘いキャンディ、チョコレート、ポテトチップにオレンジジュース、
ホットなアップルパイに焼きたてクッキー。
豚さんだからといって太りすぎはいけません。
なにしろここはサーカス団、動けなくなってはいけないのです。
そこで小人のエイヒはピギィにダイエットを勧めました。
いち、にー、さん、よんっ
縄跳びをまわすたびに、ずしんずしんと地響きが鳴るようです。
ピギィは毎日毎日エイヒと共にダイエットにはげみました。
でもいっこうに体重は減りません。
不思議に思ったエイヒは夜中にこっそり
ピギィの小屋を覗いてみました・・・するとどうでしょう!
ピギィは口いっぱいにお菓子をほおばり
涙を浮かべているじゃありませんか。
エイヒは思わず叫びました。
「いったいどうしたってんだい、ピギィ?」
ピギィは食べるのをやめることなくこう答えました。
「ボクはつらかったんだ、ボクは醜くて太っててみんなから嫌われてるのさ!食べることでしかボクはさびしさを埋められないんだ!!!」
エイヒは小首をかしげながら少し考えていいました。
「ピギィ、自分からは決して逃げられないんだよ、だから一緒にがんばろう、できるかい?」
本当はサーカスが大好きなピギィの返事はいうまでもないでしょう。

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絆だから、絆だけど

Syammu72   シャム双生児のペニーとヴァギィはサーカス団の名コンビ。
  いつも息のあった芸で観客を喜ばせています。
  ペニーとヴァギィはご飯を食べるときも、
  眠るときも、みんなとトランプ遊びをするときも、
  いつも一緒です。
  トイレにいくときさえ一緒の大の仲良しさんです。
  でも、太陽が2つとも沈んでしまったある夜、
  ヴァギィは少し悲しげにペニーにいったのです。
  「あたし、ひとりになりたいの」
  ペニーはショックでした、
  いつも一緒だったのに、あんなに仲良しだったのに。
  ペニーとヴァギィはどうなってしまうのでしょう?
  でも団長だけは知っています。
  一人が二人になるときは、独りになるときだってことを。

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お披露目の夜

Ohirome72 がんばってがんばって練習したの。
上手に玉が扱えるように、必死になって練習したの。
何度も泣いたわ・・・どうしてあたしの腕は
こんなになっちゃったんだろうって。
何度も恨んだわ、あの日のあなたのこと。
でもあたしは前を向いたの。
やっても無駄だと何度もいわれたけれど、
あたしは懸命にがんばったの。
玉を扱うことだけがあたしの生きがい、
上手に転がして皆を幸せにするんだって。
今日はあたしの晴れ舞台。
親友の象のエレにまたがり、大胆に、繊細に、やり通してみせる。
嫌な汗がしたたり落ちても、皆が喜んでくれればそれであたしはいいの。

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2008年3月26日 (水)

無農薬のヒトたち

Munouyaku72 このサーカスには人手が足りません。
移動につぐ移動の生活なので、
みんないやがって働いてくれないのです。
そこでベテラン曲芸師の象のウーハは、
ヒトを育ててみようと思いました。
農薬を使わない健康的なヒトたちです。
果たしてうまくいくでしょうか?
そしてその毒のないヒトたちは本当のヒトなのでしょうか?

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素敵な贈り物

Nekomusume72   彼女がこのサーカスにやってきたからは、
  お客さんは増え続け「幸運の子猫」と呼ばれみんなの
 人気者でした。
  いつもいつも「幸運の子猫」と呼ばれていたので
 本当の名前を忘れてしまうほどでした。
  そんな彼女も齢を重ねもうおばあちゃんです。
  若いころと同じとはいかないけど、今も「幸運の子猫」として
  たくさんのお客さんをひきつけている彼女。
  そこで、団長さんは考えました、彼女に何か贈り物しよう、と。
  明日は彼女の512さいの誕生日。
  めずらしい3つの尻尾のかつおぶしがいいだろうか?
  それともゆっくり休めるまたたびの香りのベッドがいいだろうか?
  一晩中何がいいかと迷い続けた団長があげたのは『名前』でした。
 「幸運の子猫」は立派な名前を、団長とサーカスのみんなからプレゼントされたのです。
  彼女は飛んで喜んで涙を流しながら
 「ありがとうありがとう」と繰り返しました。
  どんな名前か?って・・・・・・ それはヒ・ミ・ツ。

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特別なお稽古

Nekota72   ある少し曇り空の日の出来事です。   
  サーカスの連絡用掲示板にはこう書かれていました。
  「明日の芸のお稽古は女の子だけで行います。
  男の子は広場でドッヂボールをしておいてください。団長よ り。」
  ???
 「そんなのズルイわ」
  お稽古嫌いの子猫のナーミャは、ぷんすかぷんすかとご機 嫌ななめです。
  でもこのサーカスでは団長命令は絶対なのです。
  文句を言いながらもナーミャは、指定されたお部屋へと向  かいました。
 ナイショのお稽古を終えたナーミャには、
 ドッヂボールをしている男の子たちがとっても子供に見えていました。
 ナーミャはもう少女ではなく、一人の女になったのです。

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2008年3月25日 (火)

みーつけたッ!

Mitukete72  今日はひさしぶりのおやすみの日。
 サーカスのこともお客さんのこともきびしい練習のことも忘れて
 みんな楽しくでかくれんぼ大会です。
 ひとり、ふたり、とみんなが見つかっていく中、
 うさぎのウェイアは最後の一人まで隠れ続けました。
 そして、ふと、思ったのです。
 このままボクが見つからなくていなくなってしまったら、
 みんな悲しんでくれるだろうか、さびしがってくれるだろうかって。
 そんなことを考えたウェイアは不安になってしまいました。
 そしてすぐに大通りに出て、みんなにみつけられることをのぞんだのでした。
 「みーつけたっ!!」
 ウェイアはちょっと複雑な気分で目を白黒させるばかりでした。

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愛しあうってコトは。

Aisiau72_6 人気者の猫のナッキィはいつもお客さんに、
たくさんのファンレターをもらっていました。
それは大きなトラックにも積みきれないほどの量で、ナッキィは鼻高々の毎日でした。
でもナッキィは本当の愛を知らなかったのです。
人魚のカナがサーカスにやってくるまでは。
ナッキィとカナは一目で恋に落ちました。
そして、お互いを求めあいました。
でも、ナッキィは猫、カナは魚。
ナッキィはだんだんカナを食べたい欲求が
抑えられなくなってきたのです。
サーカスのテントのむこうで、何が起こってしまうのでしょう。
それはきっと本当の愛のカタチ。

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