月闇夜
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一見普通に見える玉乗りの娘でしたが、彼女は病に侵されていました。
人知れず毎晩悪夢にうなされていたのです。
そう、彼女は心の病にかかっていたのです。
それを知られたらサーカスに居ることが出来なくなると思った娘は
必死に病気を隠しながら芸を続けていたのです。
でもとうとう我慢の限界がやってきてしまいました。
彼女は舞台の上でわけのわからないことを大声で叫んでしまったのです。
ふりかかる容赦のない冷たい視線に耐え切れなくなった彼女。。
目覚めたのはサーカス団の医務室のベッドの上でした。
いつの間にか気絶してしまっていたようです。
彼女の心は絶望と病気への憎しみでいっぱいでした。
「なんで私だけなんで私だけなんで私だけ!
苦しいの苦しいの苦しいの苦しいの!!みんなみんな病気になってしまえばいいのよっ!!!」
それは舞台で叫んでいたことと一字一句違わない彼女の心の叫びでした。
サーカス団が人気のあった時代、心の病がまだ理解されてなかった時代。
今では・・・今も??????
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「困ったもんだよ、まったくサ」
愚痴を呟きながら、ガービィは一生懸命ゴミ拾いの毎日です。
あまりに素晴らしい玉乗り芸に拍手をしすぎて、
はずれてしまった仕立て屋の腕。
開園時間に間に合うように、急いで走ってもげた灯台守の脚。
ピエロの芸にひさしぶりに笑った、不幸な少女の濡れた唇。
いろんなものたちをガービィは、愛用のハサミで掃除してゆきます。
ん、今度はなんだろう・・・・
ガービィは今までみたことのないゴミを見つけました。それは、小さくて四角い箱。
おそるおそる中を見てみると、入っていたのは真っ白な液体でした。冷やかしにゴミ拾いを観ていた会計士のグリネルは長いくちばしをひくひくと動かしながら、興味深げに観ています。と、ガービィが液体に触れた途端、彼のもう一つの姿が・・・・。
「あんた、その顔はなんぞな。どっちが本当の姿なんぞい?」
びっくりしたグリネルは思わず叫びました。
「どっちも本当の僕なのサ、そういうものじゃないかい?そんなに気にするものでもないサ」
涼しげな顔でゴミ拾いを続けるガービィを観ながら、グリネルは思いました。とすると、わしにもきっともう一つ・・いや二つ・・・
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それは一瞬の出来事でした。
空中ブランコの練習中だったあの娘は瞬きをする間もなく、
きりんさんが何匹肩車しても届かない高さから転落したのです。
即死でした。あの日から3年、お酒を手放せなくなったお母さん。
みんなが心配しました。アルコールはお母さんの身体を心を容赦なく蝕んでいきました。
もうダメかもしれないな・・・と誰もが思いはじめたある日、
お母さんはほろ酔いの中、夢をみました。
夢の中でピンクの象が踊りながら言いました。
「 ☆○△×☆☆!!!」
そして決心しました、もうお酒はやめようと。
畑を耕すピンクの象はこうして産まれたのです。
そのお父さんが、幻覚か、妄想なのかはわかりません。
でもこの鮮やかな象さんは、愛娘を亡くしたお母さんにとって、
かけがえのない存在になったのです。
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このサーカス団には郵便ポストがあって、
それは時々きまぐれに森の中や道端にひょっこりあらわれます。
ある日、一風変わった手紙がサーカス団に届きました。
赤茶けた封筒に入れられた深緑の便箋には、
不思議なことに何も書かれていなかったのです。
それはしばらくの団員の間で話題の中心でした。
「あぶりだしだろうか」「書き忘れじゃよ」「無言の応援と思うわ」
様々な憶測が飛び交います。
でもサーカス団のみんなはわかっているのです。
この手紙をポストに入れたとき、
送り主の心の中にはサーカスのみんなが居た。
文字や言葉はなかったけれど、そのことだけで充分だったのです。
もしも運良くポストに出会えたならば、
あなたもお気に入りの団員宛に手紙を送ってみてはどうでしょう?
ファンレターや感想文、もしあなたに不満があるのなら、注文をつけてもいいのです。サーカスをみてくれるみんなの想いがたくさん詰まった手紙、それを団長や団員たちは楽しみに待っているのです。
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甘いキャンディ、チョコレート、ポテトチップにオレンジジュース、
ホットなアップルパイに焼きたてクッキー。
豚さんだからといって太りすぎはいけません。
なにしろここはサーカス団、動けなくなってはいけないのです。
そこで小人のエイヒはピギィにダイエットを勧めました。
いち、にー、さん、よんっ
縄跳びをまわすたびに、ずしんずしんと地響きが鳴るようです。
ピギィは毎日毎日エイヒと共にダイエットにはげみました。
でもいっこうに体重は減りません。
不思議に思ったエイヒは夜中にこっそり
ピギィの小屋を覗いてみました・・・するとどうでしょう!
ピギィは口いっぱいにお菓子をほおばり
涙を浮かべているじゃありませんか。
エイヒは思わず叫びました。
「いったいどうしたってんだい、ピギィ?」
ピギィは食べるのをやめることなくこう答えました。
「ボクはつらかったんだ、ボクは醜くて太っててみんなから嫌われてるのさ!食べることでしかボクはさびしさを埋められないんだ!!!」
エイヒは小首をかしげながら少し考えていいました。
「ピギィ、自分からは決して逃げられないんだよ、だから一緒にがんばろう、できるかい?」
本当はサーカスが大好きなピギィの返事はいうまでもないでしょう。
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彼女がこのサーカスにやってきたからは、
お客さんは増え続け「幸運の子猫」と呼ばれみんなの
人気者でした。
いつもいつも「幸運の子猫」と呼ばれていたので
本当の名前を忘れてしまうほどでした。
そんな彼女も齢を重ねもうおばあちゃんです。
若いころと同じとはいかないけど、今も「幸運の子猫」として
たくさんのお客さんをひきつけている彼女。
そこで、団長さんは考えました、彼女に何か贈り物しよう、と。
明日は彼女の512さいの誕生日。
めずらしい3つの尻尾のかつおぶしがいいだろうか?
それともゆっくり休めるまたたびの香りのベッドがいいだろうか?
一晩中何がいいかと迷い続けた団長があげたのは『名前』でした。
「幸運の子猫」は立派な名前を、団長とサーカスのみんなからプレゼントされたのです。
彼女は飛んで喜んで涙を流しながら
「ありがとうありがとう」と繰り返しました。
どんな名前か?って・・・・・・ それはヒ・ミ・ツ。
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